

東京事務所の川上です。
今回は、《貨客混載輸送》で届く新鮮食材が楽しめる店舗をふたつご紹介します。
貨客混載輸送は公共交通の維持・確保の取り組みとして数年前より注目され、コロナ禍による利用者減の影響もあって取り組みが加速しています。
西鉄グループにおいても高速バスを活用した取り組みを既に実施していますし、JR九州も新幹線(の未活用スペース)を活用した荷物輸送サービスを始められています。
中でも、常設の店舗(拠点化しているもの)は珍しい取り組みのため、今回はその事例をレポートします。
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事例①「バスあいのり3丁目テラス」(新宿)
新宿にあるこちらのカフェ・レストランは、㈱アップクオリティと三菱地所㈱が運営されています。
両社は、2018年7月に貨客混載輸送の先駆的な取り組みである「産地直送バスあいのり便」(高速バスの空きトランクを活用した輸送)をスタートし、2020年9月に常設店舗「バスあいのり3丁目テラス(新宿)」をオープン。
この施設を通じて、日本中からヒト・モノが集まる新宿において地方と都市を結びつけ、双方の活性化に寄与するとともに、新宿3丁目の裏路地における新たな賑わいの場の創出を目指されています。
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メニューは多彩で価格も(東京では?)リーズナブルだと感じました。
日本中の様々な地域から届く新鮮で珍しい食材を使ったピザやライスボウル、サラダなどが提供され、季節限定のメニューも豊富なようです。
お店はテラスと称するだけあって緑が多い屋外空間において、落ち着いて食事を楽しめる環境でした。
私が訪れた日は8月末の大変暑い日だったのですが、木陰と扇風機と季節限定のいちじくクリームソーダのおかげで快適に過ごすことができました。(早くコロナ収束して、冷たいビールが飲めたら最高ですが・・・)
●-----詳細データ-----●
開 業 2020年9月
輸 送 高速バス(空きトランク活用)
産 地 全国各地(多数のバス会社と連携)
形 態 カフェ・レストラン
主 体 株式会社アップクオリティ、三菱地所株式会社
公式HP http://www.ainoribin.com/3chometerrace/
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事例②「信濃の風」(大宮駅)
2つ目は、JR東日本グループの取り組みです。
同グループは「地方を豊かに」を合言葉に地方創生の推進に取り組まれており、列車を活用した地域産品などの輸送サービス(貨客混載)についても積極的におこなわれているようです。
その一環として本年6月にJR大宮駅構内に常設された「信濃の風」では、毎日新幹線で直送された信州(長野県)の農産物等を購入いただけます。
この取り組みを通して、これまで現地でしか手に入らなかった地元ならではの味、鮮度の良い農産物と出会える場を首都圏の方に提供することで、長野県の魅力を発信することを目的とされています。
確かに長野県はブドウや桃などの果物や野沢菜や山菜などの野菜も豊富でおいしいイメージがありますね。
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店舗は改札を出た大宮駅の二階にありましたが、駅が広く(博多駅くらい)、お店があまり目立たないため探すのに若干苦労しました。
店員さんに聞いたところ、通常より若干少ないとのことでしたが、桃をはじめ、それなりの品数が揃っていると感じました。
ちなみに店員さんは全員長野から通われている方で、地元の方だから知る"生産者の思い"や"おすすめの食べ方"、"観光情報"なども教えていただけるそうです。私に接していただいた方も大変親切な方でした。
●-----詳細データ-----●
開 業 2021年6月
輸 送 北陸新幹線(あさま)
産 地 長野県
形 態 農産物・加工品の販売(JR大宮駅構内)
主 体 JR東日本(およびグループ会社)
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結びに
今回は、「高速バスを使った飲食サービス」と「新幹線(鉄道)を使った農産物の販売」の貨客混載輸送を活用した事例をご紹介させていただきました。
共通している点は「旅客用の乗り物で運ばれてきた珍しさ(ワクワク感)」に「生産者の思いが詰まった新鮮な食材」を掛け合わせてストーリー(価値)を作っていることです。
裏通りに立地していたり、仮設の店舗のような見た目でわかりにくかったりと、まだまだ発展途上な感じは否めませんが、常設できていることは素晴らしいと思います。
おそらく採算面や運営面など課題も多いでしょうし、貨客混載輸送だけで公共交通の維持が可能だとも思いませんが、駅をはじめ利便性が高い場所にこのような機能があることは「まちの価値(魅力)向上」つながることは間違いないと感じました。
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