

こんにちは、国際物流事業本部 営業企画部です。
福岡市の15倍、人口約2,500万の中国最大の都市、上海。
古くから中国における商業の中心地として知られていますが、中国が飛躍的な発展を遂げ、GDP世界2位となった現在では世界経済の中心の一つとなっています。
上海市とその隣接する省には無数の工場が存在し、世界屈指の工業都市としての顔も持ち、国内外に向けて、半導体、タブレットPC、家電など、さまざまなものが生産されています。
その生産に使われる部品や材料は国外からも調達し、毎日のように日本を含む世界各地から大量に上海へ到着しています。
そんな上海の空の玄関口、上海浦東国際空港 (以下、浦東空港)は、総面積40平方キロと、福岡市博多区(31平方キロ)がすっぽり入るほどの広大な面積を誇り、2021年に成田空港の1.5倍となる約400万トンの貨物量を取扱うなど物流の分野において世界トップ3の常連です。
西鉄上海社も浦東空港の中に事務所と倉庫を持ち、飛行機から降ろされたたくさんの到着貨物を毎日受け取ってお客様にお渡ししているのです。
さて、その巨大都市上海が、皆さんご存知のように今年3月末から2カ月以上もの間、ゼロコロナ政策により封鎖されました。
ニュースには市街地に誰もいない様子を写した映像が流れ、都市の全ての機能が停止してしまったかのようでした。
しかし、そんな中でも航空貨物の動きを止めないよう空港敷地内に残って手配を続けた人たちがいたのです。
西鉄上海社の空港事務所に残り、貨物の動きを決して止めなかった29人のお話をご紹介します。
翌日朝5時から都市封鎖と市から発表 いざ空港へ!
「3月28日朝5時よりPCR検査を一斉実施します。 第一弾は市の東部です」
3月27日夜8時過ぎ、中国の通信アプリ、ウィーチャットに上海市から突然メッセージが出されました。
上海市政府は市の中央を流れる黄浦江を境として東西に分け、全ての人を対象にスクリーニング(PCR検査)し、その間は封鎖を行う、という内容でした。
上海で航空貨物に従事する誰もが、一昨年や昨年、突然発生した浦東空港の封鎖を思い出しました。
浦東空港では関係者全員を対象としたPCR検査が行われ、人手は不足し、空港全体が大混乱となり、物流も滞留してしまったのです。
中国の封鎖のやり方はバブル方式、つまり指定地域をさらに細かく泡のように区切り、その泡の内と外で人の接触を完全に遮断するやり方。
浦東空港も一つのバブルとして区切られました。
封鎖となる28日朝5時より前に空港に入れば、空港内で貨物を動かす手配は可能です。
市の発表では上海市東部の封鎖は4月1日までの5日間。
西鉄上海社の航空輸入担当者やパートナーとして倉庫作業をするYUD社(上海長発国際貨運)のスタッフ、計29名は、西鉄の航空貨物を絶対に止めてはいけない、と使命感を持って空港へと入っていったのです。
「毛布片手に空港に駆け込みました!」
29人の一人、西鉄上海社で輸入貨物関連書類の作成を担当する尹(いん)さんは振り返ってそのときの意気込みを教えてくれました。
尹康さん - 輸入貨物関連書類作成担当
延長でも、モチベーションは途切れない!
上海市東部は4月1日朝5時に封鎖が解除されるはずでしたが、市中感染者が増加していることで封鎖が延長されることになりました。
浦東空港で勤務する西鉄上海社とYUD社の29人も空港のバブルの中から出られずにいました。
バブル方式では極めて特別な事情がない限り、決められた地区の外に出ることはできませんし、自宅のある地区に入ることもできません。
浦東空港に到着する貨物はと言うと、貨物の量は多少減ったとは言え、緊急貨物は増えるいっぽう。
上海の多くの顧客工場も、従業員が敷地内から出ずに泊まり込んだり、生産場所を一時的に移したりして、何とか操業を続け、貨物の受け取りを今か今かと待っていたのです。
貨物搬出担当の沈さん、カスタマーサービス担当の陶さんは当時の空港での多忙な様子をこのように語っています。
「大量の貨物が滞留し、通常の2-3倍の時間を要する事となりましたが、お客様との連携により円滑な引き渡しを行うことに努めました」 (沈さん)
「在宅勤務をしている同僚と空港の橋渡し役をしました。通常業務に加え、施設の消毒なども行いました」(陶さん)
沈超さん- 貨物搬出担当 陶盛杰さん - カスタマーサービス担当
食事は封鎖の中でも例外として運び込まれていましたし、シャワーなどもあって衛生面も問題ありませんでした。
48時間に1回のPCR検査と毎日の検温も義務付けられ、健康面も管理が行き届いた状況でした。
とは言え、閉鎖的で過酷な環境の中、モチベーションを維持しながら働くのは並大抵のことではなく、まさにプロ意識のなせる業だったのです。
現場での作業風景 散髪風景
現場だけじゃない、みんなで乗り切れ!
封鎖から1か月。上海市全体に先の見通しの立たないことによる焦燥感や、長期化による倦怠感が漂っていました。
浦東空港のバブルの中では相変わらず多忙な日々が続いていましたが、やはり普段使っていたものが便利だと改めて気づいたり、いつもの食べ物が恋しくなったりすることもありました。
西鉄上海社は上海以外にも6つの拠点を持ち、遠くは2,000キロ離れた成都まで支店を持っています。
浦東空港の29人への支援のために各拠点が協力を考えていましたが、上海市に隣接しながら封鎖対象ではなかった蘇州支店が物資の準備と輸送を行うことになりました。
蘇州支店は、空港の29人からリクエストを取り、徐々に市中で物資が不足する中で必要な物資とリクエスト品の購入に奔走しました。
とくに、上海市を通り抜けて空港へ入るトラックを見つけることは大変で、全ての自治体から許可を得ているドライバーを何とか見つけ出し、空港の29人に喜んでもらえる物資を託したのです。
さて、29人の中からリクエストのあったものを少しだけ紹介します。
貨物オペレーション主管の張さんのリクエスト : 『洗濯機』
「いちばん大変だったことは実は洗濯です!家では自分で洗濯していなかったので・・・」(張さん)
張華明さん -貨物オペレーション主管
中国ではすでに珍しくなった亭主関白ですが、張さんもいよいよ卒業のようです。
匿名希望の方が行ったリクエスト : 『ザーサイ』
「どうしても食べたくなるのです!」(匿名希望)
日本人にとっての梅干し、ぬか漬けと同じように家庭の温かみを感じることができる中国のソウルフード。これは仕方ない。
倉庫作業班長の韓さんのリクエスト : 『半ズボン』
「3月27日に出勤するときは厚手のズボンでしたが、最後には支給していただいた半ズボンを着ていました」(韓さん)
韓健康さん - 倉庫作業班長
韓さんが厚手のズボンから半ズボンに切り替えたように、封鎖は季節を跨ぐほどに長期化し、封鎖解除が決定となったときには、3月27日に空港へ入ってから既に2か月以上が経過していました。
いよいよ封鎖解除が決定!
5月後半、上海市政府は6月1日より段階的に封鎖を解除すると発表しました。
度重なる延長に、多くの人が当初は半信半疑でしたが、6月に入ると本当に少しずつ封鎖が解除されたことで希望が出てきました。
とは言え浦東空港は海外からのコロナ流入をせき止める最重要拠点。
上海市内からは2週間遅れで解除となることが決まりました。
このもどかしい2週間を元気に乗り切れたのはやはり感謝の言葉のおかげでしょう。
西鉄上海社の社内や西鉄グループからだけではなく、お客様やトラック運転手からもたくさんの「ありがとう!」の言葉。
「ありがとう、と言われることがとても励みになりました。かけがえのない経験をしたと思います」(カスタマーサービス担当の陶さん : 写真前掲)
お客様もトラック運転手もお互い厳しい状況の中で一緒に苦しい時間を乗り切りました。この信頼感はコロナ後もきっと続くことでしょう。
そしていよいよ最終日。YUD社で副総経理を務める于さんは感慨深く、このように語っています。
「6月14日の夜、その日最後の貨物をトラックへ渡した後、私がドアの鍵を閉めていちばん最後に事務所を出ました。ふと夜空を見上げると空には輝く満月。わが家への帰り道を照らしてくれていました」(于さん)
于成喜さん- YUD社 副総経理
浦東空港の29人の勇気、忍耐力、プロ意識、そして西鉄上海社、YUD社の団結力、とにかくみんなで乗り切った長い長い80日間が終わったのです。
最終日、西鉄上海社の空港事務所の前で撮影
逆風而行!守护有我! 駐守机場80天!
(逆風にも立ち向かおう、私たちがいるから。空港での80日間の戦い)
プロフェッショナルとして頼もしいメッセージを掲げた。
皆さんへ御礼
高橋広志さん - 西鉄上海社 総経理
「ロックダウン中は多々ご心配をいただき、ありがとうございました。
予想以上に長引きましたが、西鉄上海社のスタッフと日本人駐在員は、ロックダウンでの生活や在宅勤務を何とか乗り越える事ができました。
とくに空港倉庫で80日間、生活と作業を行っていただいた29名のスタッフには感謝の気持ちしかありません。
そのお陰で、日本、各国グループ会社からの輸入貨物を処理する事ができました。
海運についてもお話しますと、上海港での処理が難しい部分があり、寧波港を利用し対応する事になりました。
上海本部の海運部スタッフから受けた依頼を、寧波支店がしっかりと対応し手配を行いました。
西鉄上海社の全スタッフが協力し、このロックダウンを乗り越える事ができました。
未だ政府からの厳しい規制があり今後もご迷惑をお掛けするかもしれませんが、ご理解いただけますと幸いです。
より一層のサービスを提供できる様、西鉄上海社スタッフ一同、精一杯努めてまいります。」
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